電話応対終了後の記録作成が大きな負担に
姫路市子育て支援室では、市民や関係機関からの相談や連絡の多くを電話で受けており、適切な対応を図るために不可欠な電話内容の記録作成に多くの時間を費やしていました。また、電話中に記載したメモをもとに、電話終了後に記録を作成していたため、即時の情報共有が難しく、担当者以外の職員が相談状況を把握しづらいという課題もありました。さらに、時間外労働の増加や、本来業務である相談内容の解決に向けた支援検討の時間が圧迫されることも問題となっていました。
記録作成の負担軽減のため、実証実験を実施
この課題に対応するため、姫路市子育て支援室では、兵庫県が令和5年度に実施した「ICTを活用して実証実験に取り組む自治体を支援する事業」に応募し、電話の会話を自動的にテキスト化(文字起こし)できる「AmiVoice Communication Suite」を活用した実証実験を実施しました。
相談者と職員の電話内容をAI音声認識によりリアルタイムで自動的にテキスト化し、電話終了後にその内容を活用することによる、記録作成時間の削減について検証しました。
記録作成時間を削減し質も向上、情報共有の迅速化も
実証実験の結果、「記録作成に要する残業時間」は、実証前の月平均16時間から実証後は月平均5.5時間へと短縮され、記録の質も向上しました。
また、「年休取得率」も改善され、実証前の月平均0.7日から実証後は月平均1.6日となり、0.9日の向上が見られました。
さらに、即時対応が求められる場面では、テキストをそのまま印刷し、重要箇所にマーカーを引いて情報共有を行うなど、判断の迅速化が可能となりました。
記録作成時間の削減により、相談後の経過確認を行うアドバイザー会議や支援方針を検討する個別ケース会議など、職員間での情報共有の時間を創出できるようになり、本来の業務である相談後の対応の質向上も期待されています。


セキュアかつコスト抑えた利用環境の実現
行政の相談業務では機微な情報を扱う可能性が高く、「セキュアな環境を担保する技術」が必須です。
今回は、「マイナンバー系」のネットワークにシステムを構築し、自治体の基準を満たしたセキュアな環境での利用を実現しました。
また、既設のモジュラー端子型電話機をそのまま活用することで、コストを抑えた導入も可能となりました。
実証実験の成功とセキュアな利用環境が評価され、本稼働
実証実験による効果とセキュアな利用環境の実現が評価され、利用対象業務は子育て支援室(児童相談)から福祉部門(DV相談、福祉相談、いじめ相談など)へと拡大され、本稼働が開始されました。 今後は、さらなる利用範囲の拡大も計画されています。
【姫路市様 コメント】
本市では、人口減少社会において複雑化・多様化する相談ニーズへ対応していくための手法として、前年度より本システムの稼働を開始しました。「人にしかできないこと(市民サービス・福祉の追求)を人が行う」ことを芯に据え、官民が連携してデジタル技術を活用することにより、相談支援の質を充実させ、さらなる市民福祉の向上につなげてまいります。
姫路市 子育て支援室(デジタル戦略室兼務)技術主任 藤井宏昭
【姫路市様インタビュー記事】
自治体通信65号「AI音声認識」を活用した電話応対で、児童相談業務の質向上を図る
https://www.jt-tsushin.jp/articles/case/jt65_advanced-media
※出典「2025.05.21 弊社ニュースリリース (https://www.advanced-media.co.jp/newsrelease/10068/)」